不快な音で若者を撃退?
「モスキート音」と呼ばれる18キロヘルツ前後の高周波は、20代後半以降の大人の耳では聞くことができず、若者だけを不快にする効果があるのだそうです。
で、深夜の公園にたむろして迷惑行為をはたらく若者達を追い払うため、足立区がこの音を使うことを思いついたらしいですよ。
深夜の公園で騒ぐ若者、不快音で「撃退」 足立区が実験(asahi.com、2009年5月21日)
足立区の実験 モスキート音 若者どこ吹く風 (YOMIURI ONLINE、2009年5月23日)
若者を「モスキート音」で撃退する試み、足立区の公園で実施(スラッシュドット、 2009年05月26日)
この怪しげな会社の製品か?
compound SECURITY SYSTEMS
2006年のイグノーベル賞をとってるのね
Winners of the Ig Nobel Prize
真夜中に公園に集まってくる「若者」を排除しようとすることが正しいのかどうかについては、ここでは問題にしません。そんなものは場合によって事情が違うのがあたりまえで、一般化はできるわけないですから。(この公園の場合は、かなり悪質で違法行為ばりばりのようですが)
ついでに、実際に広い野外空間でこんな音が本当に効果があるのかどうかについても、あまり興味がありません。実験をやってみればすぐにわかるでしょう。
ただ、せっかくのテクノロジーの使い方として、間違っているとまでは言わないけど、ちょっと気持ち悪いと思うのですよ。
まず、排除したい対象に対して苦痛を与えようと発想が気にくわない。
少なくとも公園に集まるだけなら迷惑でも違法でもないのは明らかなのに、その段階で無差別で苦痛を与えてやろうというのは、どうなんでしょうね。これじゃ、無法な若者達と同じ穴の狢じゃないのかな?
建前かもしれないけど、実際に違法な事が行われてから、警察をつかって逮捕しまくるのが正しいんじゃないかな。それがダメなら、いっそのこと夜の公園を立ち入り禁止にしてしまえばいいのに。
もうひとつ。
排除したい対象と、この音を苦痛と感じる対象が、同じとは限らないということを、まったく無視しているのが気にくわない。
狼藉者の若者の中にだってこの音が聞こえないのがいるでしょうし、逆に年寄りも含めた善良な公園利用者でもこの音を不快に感じる人がいるでしょう。気にくわない連中の属性を勝手に決めつけて、その属性に嫌がらせをするために利用されるテクノロジーが不憫でなりません。……ていうか、これってSFでみかける「特定の人種にだけ有効なウイルス兵器」と発想が同じだろうよ。
てなわけで、僕は足立区によるこの実験とやらをとても気持ち悪いと思うのだけど、これって少数派なのかなぁ?
ちなみに、同じテクノロジーでも、このあたりの記事で議論されている使い方は、とても正しいと思いますよ(ちょっと古い記事ですが)。
大人には聞こえない着信音(スラッシュドット、2006年06月16日)
授業中でもケータイOK!? 大人になったら聞こえない着信音!!(日経トレンディネット、2006年06月26日)
大人に聞こえず子どもだけ聞こえる音があったら、それを使うことによって子どもに何が得られるのかを考えるのが、正しい発想だよね。たとえそれが、授業中の携帯の着信音やら、モールス信号でのカンニングだとしても、これこそが正しくて建設的なテクノロジーの使い方だと思うな。
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