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2006.06.26

インターネットのガバナンス

インターネットって、いったい誰が管理しているの? なにが問題なの?

……について、予備知識がほとんど無い人に対して説明せねばならなくなったので、いろいろメモ。

昔の経緯から昨年末のWSISの話題まで調べようと思ったのですが、全てを網羅して全くの素人向けにわかりやすく整理された資料ってあまり見あたらないのね。なので、できるだけ年代を追って順番にメモってみます。私自身ど素人で、短時間でネットで検索しらべているだけなので、間違っているところもあるかも。
 
 
その1 古き良き時代

インターネットがアメリカの軍事用の研究から始まったことは、広く知られていると思います。東西冷戦とかスプートニクショックとかのおかげで、たとえ核戦争が起こり一部が壊滅しても、全体としては機能するコンピュータネットワークを研究する必要性が生じたわけです。

1969年、アメリカ国防総省の要請により、4つの大学や研究所を結んだネットワーク「ARPANET」がつくられました。これが今のインターネットの原型となりました。その後、1970年代から80年代にかけて、アメリカやヨーロッパの大学・研究所などを結ぶコンピュータネットワークが次々と作られ、それらが相互に接続されて、徐々にインターネットが形づくられていきます。中でも、1984年にNSF(全米科学財団)がスポンサーとなりつくられたNSFNETは、後のインターネットの基幹インフラとなります。

この時代、どこのコンピュータが、どんな名前で、どんなアドレスをもつのか、という情報は、たったひとつのファイルで管理されていました。スタンフォードのSRI-NIC (Stanford Research Institute - Network Information Center)が管理しているhosts.txtというファイルに、全てのコンピュータの名前とIPアドレスの対応表が一括管理されており、全てのコンピュータがこのファイルを共有していました。新しいコンピュータを導入したり情報に変更があった組織はSRI-NICに連絡します。すると、修正されたhosts.txtがネットに参加している全ての組織に配布され、それを全てのコンピュータにコピーするわけですな。
 
 
その2 DNSの登場

上記のhosts.txt方式は、コンピュータの数が少ないうちはいいのですが、数万台単位のコンピュータがインターネットに接続されるようになると、管理は実質不可能になります。そこで、もっと効率よく管理できるように、管理の権限を分散したシステムが考えられました。

1984年に運用が開始されたDNS(Distributed Database System) は、分散型データベースシステムであり、各レベルのドメインの管理を委託することが可能です。

たとえば、このブログの"dole.moe-nifty.com"で考えます。ドメインは、"."で区切られた右の部分から順に左の部分に権限が委託されていきます。まず、ニフティ社の管理者が、".com"の管理をしている人に"moe-nifty"の登録をお願いします。その結果、"moe-nifty"の管理はニフティ社に委託されます。ニフティは"moe-nifty"の管理を好きにしていい権限をもったので、"dole"というコンピュータ名を登録するわけです。
 
 
その3 DNSの管理とインターネットガバナンス

上記のようなDNSの仕組みを考えると、ちょっと疑問が湧いてくるはずです。

一番右の".com"の部分の管理は、誰が誰に委託されてやっているのでしょう?
".com"以外の右端のドメイン(TLD、トップレベルドメイン)を新しく作りたい場合は、誰に頼めばいいのでしょう?
トップレベルドメインの情報を保存しているサーバ(ルートサーバー)の管理は、誰がおこなうのでしょう?

現在、俗にいう「インターネットガバナンス」の中心となっているのは、まさにこのDNSの管理の話題なわけです。
 
 
その4 IANA

1988年に設立されたIANA(Internet Assigned Numbers Authority)は、DNSによるドメイン管理全般に関する技術開発、標準化、制度の維持などを行う組織です。IANAは南カリフォルニア大学のジョン・ポステル教授を中心とした設置され、米国国防総省との契約に基づき運用されました。とはいえ、予算は国防総省に由来していますが、インターネット管理に対する法的責任は無く、技術者や研究者など実際にインターネットを作り上げてきた人々により自主的に運営されている組織であるとみなされることが普通でした。

IANAの仕事は以下のものです。
・TLDの割り当て
・IPアドレスの割り当て
・ルートサーバーの管理
・プロトコル番号、ポート番号等の管理I

なおこの時点では、.comや.netなど既存のTLDの管理は、DNSの仕組みの上でもこれまでと同様にSRI-NICにより行われていました。
 
 
その5 ISOC

1992年、インターネットに関わる技術者・研究者達によりISOC(Internet SOCiety)という団体が設立されます。ISOCは、インターネットの技術標準を統括するIAB(Internet Architecture Board)、実際に技術標準(有名なRFCという奴です)の決定を行うIETF(Internet Engineering Task Force)などの組織を擁し、現在にいたるまで技術的側面からインターネットを支えるインターネットコミュニティの中心とも言える存在です。

ここで重要なのは、ISOCはあくまで個人会員の会費により運営されるボランタリーベースの学術団体的な組織であり、インターネットに対する責任と権限の法的根拠はないということです。このあたりは、上記のIANAと同様です。プロトコルなどの標準については、どんな巨大メーカーや国連機関でもRFCを無視するわけにはいかないほど権威がありますが、インターネットの運営の権限については政府や民間に漬け込まれる余地がありまくりということです。
 
 
その6 インターネットの商業化

1990年、NSFNETがARPANETを吸収するかたちでARPANETが終了しました。
1992年、米国議会は、NSF(全米科学財団)に対して、それまで学術的なネットワークだったNSFNETを商用利用するための法的な権限を与えました。これが後に米国政府がインターネットに対する権限を主張する大きな根拠とされています。
 
 
その7 InterNIC(NSI)

1993年、SRI-NICが管理しているcom,org,netなど最初からあったドメイン名の管理が、InterNICへと引き継がれました。InterNICは米国政府(NSF)との契約に基づいて活動を行う組織です。

InterNICの実務はNSI (Network Solutions社)がおこなう契約となっています。これは、NSFNETが商業化されるにあたり、ドメイン管理業務の実務を行う団体を公募した結果、手をあげたのがNSIだったためです。当時インターネットを管理していたIANAやISOCなどの団体には法的根拠がないため、NSFとNSIが直接契約を行う形になったのですが、この状況が後の混乱の原因のひとつとなります。
 
 
その8 ドットネット企業の発展

1993年にゴア副大統領による情報ハイウェー構想の発表と、NCSAによるWWWブラウザ「Mosaic」の発表。1994年にNetscape Navigator登場。1995年にはInternet ExplorerとWindows95発売。……等々、インターネットの商業利用を後押しする動きが活発化し、yahoo(1995年)やgoogle(1998年)に代表されるいわゆるドットネット企業が急速に発展します。

その結果、.com .netなどのドメインを利用する団体数が激増し、InterNIC(NSI社)によるこれらの管理の費用の問題がでてきました。また、米国以外の国によるインターネットの利用も活発化し、米国政府の息がかかったIANAによる新しいTLDの登録やIPアドレスなどの管理業務に、いろいろ軋轢が出てくるようになります。
 
 
その9 ドメイン名登録の有料化

1995年9月14日、InterNICにより、com, org, net, edu, gov の管理を有料化する旨の発表が突然なされました。これに対し、突然料金を徴収されることになった企業や団体からは批判が噴出します。さらに、InterNICによるドメイン関係の事業の独占に対して、反トラスト法を根拠とした激しい議論がまきおこりました。

また、これを契機として、議論はIANAによるTLDの登録についての問題にも飛び火します。特に米国以外の国が利用しているTLD(.JPなど)の管理について、米国政府によるインターネット支配であると批判され国際問題となりました。

この後、NSFからInterNICへの委託契約が切れる1998年3月末にむけ、議論が活発化していきます。
 
 
てなわけで、ネットを自由に使いたいドットネット企業達、事業を独占しているInterNICとIANA、予算という形で影響力を行使している米国政府、そして米国以外の諸国、インターネットの管理をめぐるこの四つどもえの争いは、この後2006年まで形をかえて継続することになります。
 
 
国際社会を巻き込んでお話が面白くなるのは、こののち1998年から2005年なんですが、長くなったのでつづきは後ほど。 (いそいでICANNやWSISについて調べねば)
 
 
ここまでの範囲で総合的に参考になるのは、たとえば以下のサイト

インターネットの歴史 村井純(yomiuri)
21世紀 ドメインネーム新時代への展望(総務省 1998年 7月 7日)
最近のドメイン名(gTLD)を巡る国際情勢(JPNIC 1998年3月13日)
インターネットガバナンス(日経デジタルコア)
インターネットガバナンス(JPNIC)
 
 
つづく

(6月26日追記)
いろいろ調べてみると、私の認識が違ったところがあるようなので、ちょっと修正しました。
 

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受信: 2006.06.27 01:08

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