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2006.06.27

インターネットのガバナンス つづき

インターネットのガバナンス(2006.06.26)のつづきです。あくまで素人による素人向けのメモなので、あまり信用しない方がいいかも。
 
 
その10 混乱

当時、インターネットのドメイン管理について問題とされていたのは、主に以下の点です。

1995年のNSIによる.comなどのドメイン有料化に対する反発。
ドメインの不足と不法占拠、商標などの問題に関する係争の続発。
.comと.net以外の新たな商用TLD創設への要求。

さらに混乱に拍車をかけたのは、これらの問題について法的な責任を負っているのが誰なのかはっきりしないことです。混乱に巻き込まれた企業や各国政府、さらには国連機関からみて、これらの問題に対して文句や要求を言うべき相手が誰なのかわからない事は、異常事態といっていいでしょう。

それまで技術者や研究者が自主的に維持管理してきた自分たちのネットワークが、巨大な商業主義の渦に巻き込まれたがゆえの混乱と言えます。
 
 
その11 IAHC

1996年、このような混乱を収束させるため、IANAのジョン・ポステル氏が中心となり、IAHC(Internet Ad-Hoc Committy)が作られました。IAHCは、今後のインターネットガバナンスの有り方について検討し勧告をするための組織で、ITU(国際電気通信連合)、WIPO(世界知的所有権機関)、INTA(際商標協会国)、ISOC、IANA、IABなど、国連機関やインターネットコミュニティが参加しています。

1997年2月、IAHCによる最終勧告が提案されました。

Final Report of the International Ad Hoc Committee:Recommendations for Administration and Management of gTLDs(International Ad Hoc Committee February 4, 1997)
IAHC最終報告:gTLDの事務手続管理と運営管理に関する勧告(JPNICによる訳)

勧告の要点は以下のとおりです。

・新しいTLDを7つ新設し、これはgTLD-MoU (generic Top Level Domain - Memorandum of Understanding) と名付けられた一種の契約により管理される。gTLD-MoUは、世界中の政府や組織が署名しITU(国際電気通信連合)が保管することによって、 効力を持たせます。

・ドメイン管理の事務をおこなう企業(レジストラといいます)を、世界中から公募する。

・ドメイン関連の係争が起きた場合の解決法は、レジストラと交わした契約においてとりおこなう。手続きに関しては、WIPO(世界知的所有権機関)に依存する。 ……など。

ひとことでいうと、既存のインターネットコミュニティと国連機関が協力して新たなインターネット秩序を作るぞ、という勧告ですな。契約に対する各国の署名も得られ、この勧告に従い新しい秩序へ向けた動きが始まるかと思われた時、EUや国連の思惑どおりの動きに反発した米国政府により、思わぬ横やりが入ります。
 
 
その12 グリーンペーパー

1998年1月、突如として米国商務省電気通信情報庁よりインターネットの新秩序に対する提案が発表されます。通称グリーンペーパーと呼ばれる提案は、インターネットの歴史について、以下のような宣言から始まります。

「今日のインターネットは……米国政府の投資から生まれた結果である。これらは、DARPA(国防総省高等研究計画局)、NSF(全米科学財団)、その他 米国研究機関との契約に基づいて進められたものである。……1992年、米国議会は、 NSF に対して、NSFNET を商用化するための法的な権限を与えた。これが今日のインターネットの基礎となっている。」JPNICによる訳より引用)

要するに、インターネットはアメリカ政府のものだ! と言ってるわけです。法的根拠にはかないません。

そして、ドメインなどの管理の仕組みについては基本的に上記IAHCの勧告と似ているのですが、国連機関や各国の契約に基づいて活動するのではなく、単一の組織により調整ベースで行われるべきであるとしています。そして、IANAにかわる民間の非営利法人を米国内に新設すること、しばらくは新法人対する米国政府の影響力を持続させること、を提案しています。

A PROPOSAL TO IMPROVE TECHNICAL MANAGEMENT OF INTERNET NAMES AND ADDRESSES DISCUSSION DRAFT 1/30/98(米国商務省)
"Green Paper" 翻訳文(JPNIC)

この提案は、米国の意向が強く出過ぎているとして、インターネットのコミュニティによる大きな批判に晒されました。一方で、米国政府は、提案についての意見をインターネットコミュニティから広く聞く姿勢を貫いており、これは評価されるものと言えるでしょう。

なお、NSFからNSIへのドメイン名登録業務に関する委託業務契約は、暫定的に1998年9月末までに延長されました。
 
 
その13 ホワイトペーパー

1998年6月、米国商務省は、グリーンペーパーに対して寄せられた多数のコメントを踏まえて、 最終案 (通称ホワイトペーパー) を発表しました。

これは、グリーンペーパーと比較して米国政府の権限が弱められており、また新法人の機能や組織形態などの決定についてはすべて民間に委せるので提案してくれという姿勢であるため、インターネットコミュニティの反応もおおむね好意的でした。

Management of Internet Names and Addresses(米国商務省)
"White Paper" 翻訳文(JPNIC)
 
 
その14 ICANN

1998年10月、ホワイトペーパーをうけた協議の結果、ICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)が設立され、現在に至っています。

ICANNの業務は以下のとおりです。(ウィキペディア

・インターネットの3つの識別子(ドメイン名、IPアドレスおよび自律システム(AS)番号、プロトコルポート番号およびパラメータ番号)の割り振り・割り当てを全世界的かつ一意に行うシステムの調整
・DNSルートサーバシステムの運用および展開の調整
・これらの技術的業務に関連するポリシー策定の調整

これらの業務は、法人登録されたICANNと米国商務省との間で結ばれた、IPアドレスとドメインに関する契約にそって行われています。法的な権限がなかったIANAとは違い、ICANNはそれなりに混乱を収拾し、成果をあげてきました。

ICANNは、昔ながらのインターネットコミュニティの思想を受け継いでいると言われます。例えば、“Private, Bottom-Up Coordination”(民間主導、下意上達的調整)、“Rough consensus and running code”(大方の賛同と実際に動いている仕組みの尊重)“Open and transparent”(公開と透明性)などがあげられます(JPNIC)。 しかし、今や国際的にも商業的にも非常に大きな役割をになっているインターネットに関する問題を、このような技術者達の理屈だけで解決できるのか、疑問を投げかける人もいます。また一方で、ICANNの活動において、米国政府の影響を無視することはできません。「民間」と「政府(特に米国)」とのバランスをとることは、これからも大きな課題となっていくでしょう。
 
 
さて、インターネットの管理に関して、現在に繋がる組織ICANができました。しかし、インターネットガバナンスの問題は、民間vs政府の問題だけではありません。今やインターネットはひとつの「資源」となりました。2001年ごろより、今度は国連を舞台にして、米国とEU、そして途上国を巻き込んだゴタゴタが始まります。

というわけで、まだつづく。
 
 
とりあえず、ここまで参考にしたサイトは、たとえばこのへん。

インターネットガバナンス(日経デジタルコア)
インターネットガバナンス(JPNIC)

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