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2006.06.30

「科学」と「オープンソース」と「マイクロソフト」

「科学の方法論」と「オープンソースの方法論」は似ている、という話を聞くことがあります。

ここではオープンソースについての詳しい説明は省きますが、要するに誰でもソースコード(プログラムの中身)込みで自由に入手することができ、さらに中身を自由に改変することが保証されているソフトウェアの事です。現在ではリナックスなどの多くのソフトウェアで採用されており、世界中の人々がよってかかってひとつのソフトウェアの開発やバージョンアップのために力を注ぐことができるため、多くの場合成功しているようです。

詳しくはこのあたりを参照してください。
オープンソースの定義(Open Source Group Japan)
オープンソース(ウィキペディア)

オープンソースの対極としてあげられるのが、マイクロソフトに代表される企業により開発される商業ソフトウェア達です。例えばWindowsやofficeなどは、その中身が公開されることは決してなく、いつまでも特許や商標でガチガチに縛られており、勝手なプログラムの改変は不法行為として訴えられます。
 
 
さて、「科学」の方法論と、これら「オープンソースモデル」と「マイクロソフトモデル」とを比較してみましょう。オープンソースの厳密な意味を問わないとすると、普通の場合は「科学はオープンソース的であるべきだ」と言われるんじゃないでしょうか。科学の成果としての科学論文は誰でもアクセス可能であり、それを基に新たな研究を行う自由も保障されるべきだ、というわけですな。
 
 
しかし、科学の方法論とオープンソースの方法論の本当の類似点、そしてマイクロソフトの方法論との本当の相違点は、実は別の点にあるような気がします。それは「どんなユーザを相手にしているのか?」です

「マイクロソフトは必ず 自分のいちばん無知な顧客の意見をきく」
「Linux や OS/2 の 開発者たちは、いちばん賢い顧客の意見をきく」

これは、マイクロソフトがリナックスなどのオープンソースに大きな脅威を感じはじめた1998年頃、オープンソースについて研究し対策をまとめた社内文書、有名な「ハロウィン文書」(の解説)の一節です。

ハロウィーン文書(YAMAGATA Hiroo Official Japanese Page)
 
 
要するに、マイクロソフトは一般ユーザの中でも技術的に底辺の層をターゲットとしてソフトウェアを作るわけです。重視するのは見た目と使いごこちであり、結果としてWindowsやofficeは一般ユーザには大きく支持されています。

一方で、リナックスなどの開発者達は、ソフトウェアの事をよくわかっている人達の意見をきき、彼ら好みの開発をする傾向があります。結果として、オープンソースのソフトウェアはプロの使うサーバとしては大きなシェアを占め、またマニアに受けているものの、一般ユーザにはあまり利用されていません。

……たしかに、科学者達の方法論は、マイクロソフトというよりは、オープンソースモデルに似ていますね。
 
 

また、「動機」の点で比較しても同様です。

マイクロソフトのソフトウェア開発の動機は純粋に経済的なものであり、一方オープンソース活動に参加している人々の動機は「自分が便利なものを作りたい」もしくは「仲間のハッカー達に認められたい」である、と言われることがよくあります。……確かに、この点でも科学者はオープンソースと似ているかもしれませんね。
 
 
オープンソースとマイクロソフト、どちらが優れているのか比較することにあまり意味があるとは思えませんが、成果としてのソフトウェアの品質を考えると、ひょっとしたらオープンソースモデルの方が優れているのかもしれません。成果を人類全体が等しく共有できるという点でも同様でしょう。

しかし、全ての層のユーザに対してPCをつかえる環境を整え、PCを遍く普及させたという一点において、マイクロソフトモデルの人類に対する貢献度は計り知れないのは確かです。この点だけでも、「科学」がマイクロソフトに学ぶべきものは大きいような気がしますね。
 
 
てなわけで、せっかくソフトウェア業界が身をもっていろいろなモデルを試みているのですから、科学者達も「オープンソースモデル」と「マイクロソフトモデル」の両方のいいとこ取りをするためにはどうすればいいのか考えてみるべきじゃないかな?
 
 
……歴史と伝統のある科学の世界に対して、たかだか数十年の歴史しかないソフトウェア業界の方法論から学ぶべきなどというのは、非常に失礼なことかもしれませんが。


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