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2006.05.27

ソフトウェア技術者の免許制

なんと、アメリカのテキサス州には、ソフトウェア分野のエンジニアに与えられる免許(ライセンス)が存在するそうです。

マイクロソフトやシスコからもらう資格じゃないですよ。日本の情報処理技術者試験のような認定試験でもありません。

気になったので、関連する事項をちょっとだけ調べてみました。本当は、きちんと文献を調べたいのですが、まったく時間がないのでとりあえずWWWで得られる資料だけ参考に、自分用のメモ。
 
 
アメリカには、Professional Engineers と呼ばれる技術専門職がありまして、お上から正式な免許が与えられます。日本で言うところの「技術士」にあたるかもしれません。しかし、Professional Engineers(以下 PE と省略)は、歴史や社会的地位、国際的な知名度など、なにからなにまでお話にならないくらいレベルが高いものです。(技術士だって、実際に取得するのはかなり難しいんですけどね。)

What is a Professional Engineer?(NSPE National Society of Professional Engineers)
技術士とは(社団法人 日本技術士会)
  
 
このPEというのは、お医者さんや弁護士に免許が与えられるのと同様に、技術専門職に対して与えられる免許です。詳細は州によって異なりますが、このPEになると「エンジニア」という称号(タイトル)を使うことが出来ます。逆に言うと、PEの免許をもらわないと名刺、電話帳、論文の職業欄、履歴書などに「エンジニア」というタイトルを使う事は許されません。

さらに、これが最も重要な事ですが、アメリカ国内の公共性の高い仕事は、PEのタイトルを持っていないと行えない場合が多いそうです。「ライセンス」ですから当然ですな。また、国際的な仕事を行う場合は、PEのタイトルが重要な意味を持つ場合があります。一方で、エンジニアとしての仕事には法的な責任を負っているとみなされます。
 
 
ところで、話はかわって。

ソフトウェアの分野では、PEとは関係なく「エンジニア」という名称が気軽に使われてきた歴史があります。例えば、マイクロソフトの認定資格(Microsoft Certified Systems Engineer)などですな。

Microsoft Certified Systems Engineer(microsoft)
マイクロソフト認定システム エンジニア(マイクロソフト)
 
 
そんな風潮をうけて、ソフトウェアの「エンジニア」のあり方を他の分野と同様にきちんと考える必要がある、と考える人がでてきました。PE制度は州毎にかなり異なるのですが、全国的なPE制度の法律や試験のモデル案を作成している団体The National Council of Examiners for Engineering and Surveying (NCEES)と、テキサス州のPE制度の普及組織であるTexas Board of Professional Engineersです。1998年、これらが中心となり、テキサス州におけるソフトウェアのPEの認定が始められました。

なお、一般の PE 認定には実務経験や試験が必要なのですが、この段階ではソフトウェアのエンジニアを認定するための有効な試験が作成されておらず、試験免除制度が適用されているようです。
 
 
このようなテキサスの動きに対しては、アメリカ国内のIT業界から大きな反対が起きました。中心となったのは、Association for Computing Machinery(ACM)IEEEです。

ACMは「アメリカ計算機学会」と訳され、情報処理の分野に対して非常に大きな影響力を持っているアメリカの情報工学分野の学会です。ACMは、テキサス州のライセンス制度について、明確な反対の立場を表明しました。

こんなページまであります。

A Summary of the ACM Position on Software Engineering as a Licensed Engineering Profession(July 17, 2000 ACM)

反対の理由を超簡単にまとめると、こんな感じでしょうか。

ソフトウェア工学はいまだ未熟であり、ライセンスを保証することができない。
ソフトウェアの品質と信頼度を保証するためには、ライセンス制度は効果がない
もともとPEは土木技師のために作られたフレームワークであり、ソフトウェア工学に適用するには無理がある。ライセンスを与えるべきない者に与えられ、与えられるべき者に与えられない可能性がある。

……確かに一理あるかもしれません。ソフトウェア工学が未熟であるというのは、私も一応この分野で働く者として口に出してしまうと情けないですが、事実なんだから仕方がないでしょうね。他の工業分野のように、誰もが納得できるような知識体系も作られていないし。ひょっとすると、未熟と言うよりも、「ソフトウェア」で一括りにすることに無理があるのかも知れません。

一方、アメリカに本部を持つ電気・電子技術の学会であり、この分野では別格の影響力をもつIEEEは、ソフトウェア分野においてPEとは別の独自の認定制度(認定ソフトウェア開発プロフェッショナル資格 CSDP)を作成し運用を始めました。

Certified Software Development Professional(IEEE)

その他、州内の多くのIT関連企業やソフトウェア技術者達も、PE制度を支持しない態度を表明しているそうです。
 
 
そのような状況の中でも、テキサス州のソフトウェア分野のライセンス制はなんとか存続しており、1998年以来2002年まで44人に適用されています。(2002年以降については、ググッてもでてこなかった)。実際にPEとなった人たちが活躍しているのかどうかはわかりませんが、今のところ免許制度自体が積極的に活用されているとは言えない状況なのは確かなようです。また、同様の制度はカナダにも存在するそうですが、詳細はまだ調べていません。
 
 
てなわけで、尻切れトンボになりましたが。

要するに、ソフトウェアエンジニアの免許というものはまだ一般的だとはいえません。その必要性については議論が必要であり、さらに実際に実行する際には非常に大きなハードルがあることを覚悟しなければなりません。なんにしても、アメリカ状況には注目しておきましょう。
 
 
全体的に参考にしたのはこのあたり、。
Software engineering professionalism(wikipedia)
「米国のIT 人材市場について」(社団法人日本パーソナルコンピュータソフトウェア協会(JPSA))
 
 
たぶんつづく (2~3日中に調べねば)

(2006年5月29日追記)
つづきの記事はこちら
ソフトウェア技術者が守るべき倫理規定(2006.05.29)
 

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