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2006.01.13

科学技術倫理とスーパーロボット

先日北大で聴いてきた科学技術倫理に関する講義で、おもしろいお話がありました。科学研究と科学者の倫理の問題を、「鉄人28号」に例えてモデル化する考えがあるそうです。素人にはちょっと抽象的で難しいお話も、こーゆー具体例でモデル化してくれると簡単に理解できたりします。 というわけで、私も科学技術倫理のモデル化について考えてみました。
 
 
 科学技術が人類社会の進歩に対して果たしてきた貢献については誰もが認めるところである。一方、急激な科学技術の進歩が社会に対して強制する自然観や生命観、倫理観の転換への反発、専門家内の閉鎖的で不透明な意思決定などに対する不信など、一般市民の間には科学技術に対する負の感情も根強い。
 いまや高度に専門家した科学技術の倫理についてこのような一般市民の感情をふまえた上で考察する際、科学技術という抽象的な対象を市民にも理解しやすい具体的な例に投影した上でモデルとして考察する事が有効である。以下は、科学技術とそれを扱う科学者の倫理について、日本人の深層心理に深く刻み込まれている科学技術の象徴としての「スーパーロボット」に例えた上で考察した結果である……というのは大げさですが。
 
 
その1 鉄人28号モデル

「科学研究に善悪はなく、それを利用するものにより善悪が決まる」という、今からちょっと前に流行った科学技術倫理のモデルを「鉄人28号モデル」と呼ぶのだそうです。

鉄人28号を科学と例えると、鉄人(科学)自体に意思も善悪も責任なく、コントローラを持つ人の操縦(技術の応用)しだいで善悪が決まるというわけですな。

なるほど。非常にわかりやすいモデルです。

この調子で、他のスーパーロボット達も、同じような文脈で語れるような気がしてきましたよ。
 
 
その2 マジンガーZモデル

私らの世代で最も燃えたロボットと言えば、「マジンガーZ」(Wikipedia)です。

文字通りのマッドサイエンティスト、兜十蔵博士が私財を投じて完成させたスーパーロボットが「マジンガーZ」です。死の直前、彼は溺愛する孫(兜甲児)にZを与え、こう言い放ちます。「おまえは無敵だ!神にも悪魔にもなれるのだ!うはははは」 (まんが版)

いいねぇ。マッドサイエンティストはこうでなくっちゃ。

それはともかく、Zは神にも悪魔にもなる事が可能であり、その責任はパイロットにあるという点で、科学倫理のモデルとしては前述の鉄人と同様です

しかし、Zは鉄人とは違いパイロットが直接ロボットに乗り込むわけで、Zがピンチの時は当然兜甲児も危機に陥るわけです。科学者が結果に対してより当事者となる点において、鉄人よりも新しい科学倫理モデルといえるかもしれませんね。
 
 
その3 ガンダムモデル

ガンダム」がスーパーロボットとして画期的だったのは、ロボットを体系の中の一兵器、パイロットを一兵科として描いた事です。ですからガンダム以外にもたくさんロボットは出てきますし、主人公のアムロもシリーズの中で多くの機体を乗り換えます。

これは、ガンダムを科学技術に例えると、プロジェクト化、サラリーマン化した科学者の姿、または複雑化した社会の中における膨大な種類の科学技術の分業化などをモデル化したもの言えます。たぶん。

しかも、ガンダムをはじめとするロボット達の性能や数は国力に直結し、人類の半数を死に至らしめた大戦争の帰趨を決する重要な役割を担います。社会基盤の技術や巨大科学に代表される、経済力や軍事力に直結した現在の科学技術の姿をモデル化するのに最適ですな。きっと。
 
 
その4 エヴァンゲリオンモデル

現在の科学技術は、科学者達のコントロールを離れ暴走しつつあると言う人もいます。

暴走するスーパーロボットと言えば、そう「エヴァンゲリオン」です。(「イデオン」でも可)

国家予算なみの莫大な予算が投入され、見るからに怪しい人たちが支配している国際機関において運用される、まさに現代の巨大科学を象徴したモデルですな。

さらに、勝手に暴走して暴れるわ、敵を食って取り込んでしまうわ、少年少女を狂わせるわ、現代科学技術倫理のモデルとしてこれほどふさわしいロボットはいないでしょう。
 
 
てなわけで、科学技術倫理について語る際、スーパーロボットに例えたモデル化は非常に有効であるわけです(ホントか?)。

こんな感じで「アニメで語る科学技術」なんて本を書いたら、売れそうな気がしてきたな。

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コメント

『ゲッターロボ』や『コンバトラーV』、『ザンボット3』などの
合体ロボット系に関しては……?
合体するまで、各個人の葛藤がありますが……
ゲッター1だぁ〜いやゲッター2だぁ〜!と息が合わなかったり、
勝手に合体を解除して、人を助けに行ったり
そんなところが面白かったりします。

投稿: Ryu@vet | 2006.01.13 10:15

 大変面白く拝見させていただきました。書かれているとおり、ガンダムモデルが現実社会をよく表していると私も思います。それもどちらかというとガンダムのような試作機やアムロのようなエースパイロットではなく、ジムのような量産機と名も無き雑魚パイロットが趨勢を左右していたと理解しています。まあ、「ジムモデル」じゃあカッコつきませんが。
 視点を変えると、理系から見た科学技術がガンダムモデルで、文系から見た科学技術がエヴァモデルと言えるかもしれません。そう感じました。

投稿: galois | 2006.01.14 13:44


>Ryu@vetさん。コメントありがとうございます。

ゲッターもスーパーロボット史を語る上で欠かせないロボットですね。途中で終わってしまった最新作「ゲッターロボアーク」の続きはいつ始まるのでしょう?
それはともかく、合体変形ロボは、現在のようなプロジェクト化まではいかなくても、それなりに科学者の分業が行われたちょっと昔の科学倫理モデルとして使えるかもしれません。

実は、これ以外にも科学技術倫理モデルに使えそうなものはいっぱいあります。。
本来正義のはずの主人公が一般市民に迫害される「ザンボット3」とか、お互いにロボットを武器として利用している軍と刑事警察が対立する「パトレイバー」とか。

ホント、スーパーロボットもバカにはできません。

投稿: sapporokoya | 2006.01.14 22:26


>galois さん。
コメントありがとうございます。
 
 
> 視点を変えると、理系から見た科学技術がガンダムモデルで、
> 文系から見た科学技術がエヴァモデルと言えるかもしれません。

うまい!

私はそこまでは気がつきませんでした。さすが。
このフレーズ、他人に科学者倫理について語るとき、積極的に使わせてもらいます。

投稿: sapporokoya | 2006.01.14 22:42

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» [講義1.1]鉄人28号と鉄腕アトム(追記あり) [「こ〜すてっぷ」で学ぶ]
1.1科学技術コミュニケーション理論 第8回「科学技術倫理(1)」(蔵田先生) アトムは今でも歌えるけど、鉄人28号は歌えません。 鉄腕アトムを見て育ち、アポロの月着陸の瞬間を知っている世代は、いまだに科学に対してロマンを抱いている人が多いのではないでしょうか。さすがに、当時のような科学万能主義、未来はバラ色なんて能天気な人はいないでしょうけど。当時は、鉄人28号よりアトムが好きでした。大人になってからは、リモコンの所有者により善悪どちらにもなりうる鉄人28号のコンセプトが秀逸だと思えるようにな... [続きを読む]

受信: 2006.01.14 00:47

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