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2005.12.22

伝染する「自由」

オープンソースのソフトウェアの多くが採用しているライセンス、GPL の改訂作業が始まったそうです。

FSF、GPLライセンス改定計画を発表(IT media)
欧州のフリーソフト団体,GPL新版「GPLv3」の策定プロジェクトを発表(日経 IT Pro)
FSF、GPL Version 3の改定作業に着手(スラッシュドットジャパン)

ほほぉ。
 
 
さて、いきなり話はかわりますが。

このGPLというライセンス、発想がなかなかおもしろいんですよ。

せっかくなので、ソフトウエアを詳しく知らない一般の人にもGPLが理解できるように解説しようと試みてみます。「科学技術コミュニケーション」ってやつの一環のつもりで。 ……成功しているかどうかは、自分ではよくわかりませんが。
 
 
GPLというのは、フリーソフトの多くが採用している、ソフトの利用条件です。

PCでWindowsしか利用していない人はあまり意識することはないでしょうが、メールサーバーやWWWサーバーなどインターネットの基盤を支えているソフトウェアは、ほとんどこのGPLのライセンスで配布され、GPLの元でフリーな利用が保証されています。ソフトウエアのバージョンアップなども、GPLのおかげで世界中の人の手を借りることができ、今のインターネットはGPLのおかげで成り立っているといっても、過言ではないかもしれまんせんん。身近では、フリーのOSであるリナックスなんかも、GPLを利用しています。

まずは言葉の意味から。

--- 以下ウィキペディアからの引用

大まかに言えば、GPLとは著作権者が利用者に対し次のような許可を与える契約である。

1. このソフトウェアを誰でも自由に実行してよい。
2. このソフトウェアを誰でも自由に複製してよい。
3. このソフトウェアを誰でも自由に改変してよい。
4. このソフトウェアやそれを改変したものを誰でも自由に頒布してよい。有償で販売しても良い。ただし、その際には頒布を受けた者に対し1から4の許可を与えなければならない。

--- 引用ここまで
GPL(ウィキペディア)
 
 
GPLが適用されたフリーのソフトを改造したり、自分のアプリケーションに組み込んだりするのは自由です。しかしその場合、その成果物もまたGPLで公開しなければならなりません。

要するに、
「他人が作った物を参考にしたのなら、その結果も同じように自由に他人に利用させなさい。自分の成果だけ秘密にするなんて、もってのほか!」
というライセンスですな。

一度GPLに「汚染」されると、それ以降のバージョンはGPLの呪縛から逃れることはできません。まさに末代まで祟られます。

しかし、そのおかげでフリーソフトの自由が守られ、世界中の人が自由に開発に加わることが可能になり、世界中の人がその恩恵に浴することができるわけです。感染性のある「自由」。 一度「自由」に汚染されたソフトは、「自由」から自由にはなれないわけです。(「汚染」とか「感染」とか言葉は悪いですが、あくまで例えです)

ちなみに、この「末代まで遺伝する自由」の決まりさえ守っていれば、GPLのソフトを利用してお金を稼いでも問題ありません。リナックスで商売している会社(レッドハットとか)は、決してソースを秘密にしませんし、売ってるCDの中身を自由に使っても文句はいいません(GPLに従う限り)が、ちゃんと商売になっています。

もうひとつちなみに、このGPL、問題が無いこともないです。他の相反するライセンスと混じってしまったときにどうなるのか、各国の法律(著作権法とか)と矛盾が出たときどうすればいいのか、このあたりは裁判とかで個別に判断されることになるでしょう。
 
 
ライセンスの内容はこのへん(英語です)
GNU General Public License(FSF)
GNU General Public License(GNU)

GPLの日本語訳(あくまで非公式。正式なライセンスは英語のみです。)
GNU 一般公衆利用許諾契約書(オープンソースグループ・ジャパン)

参考になるのは、たとえばこのへん
いまさら人に聞けないGPLの基礎 (1/2)(IT media)
 
 
他のフリーソフトのライセンスとの比較はこのへん
さまざまなライセンスとそれらについての解説(GNU)

一口に「フリーソフト」といっても、GPL意外にもいろんなライセンス形態があることがわかります。GPLと似ているけど微妙に違うライセンスもあります。なんにしろ、「フリー」は「無料」ではなく「自由」の意味であり、「自由」なものを使うときにはそのかわりの制限があるのが普通なので、注意が必要です。
 
 
余談ですが、「使ってもいいけど、成果物も同様に他人に自由つかってもらえ」という形態のライセンスは、ソフトウエアを売って商売する企業にとって、なかなかやっかいなライセンスです。もし質の高いフリーソフトが身近にあったら、ソフト開発の際にそれを参考にしたいのは人情でしょう。でも、GPLのソフトを一部分でも参考にしてしまったら、その成果物もGPLに従わなければなりません。つまり、ふりーだからとGPLのソフトをちょっとでもパクッてしまったら最後、その成果としての商品の中身を公開し、誰にでも自由に中身を利用させなければならないのです(中身さえ公開すれば、製品として売るのは問題なし)。

GPLのソフトを利用しているのにも関わらずその製品の中身を非公開にしていると、どんな大手メーカーであろうと、世界中のGPL原理主義者達から総攻撃をうけます(最近も日本の某メーカーがしでかしました)。その手の方々はたいてい凄い技術を持っているので、一般に販売されている製品では隠し通すことはできないと思った方がいいでしょう。自分の製品の中身を公開したくない場合は、フリーだからといって気楽にGPLのソフトを利用しない方がいいですな。

というわけで、GPLを「堅苦しすぎ!」と批判する人も結構います。だけど、GPLがイヤなら、GPLのフリーソフトを参考にせず、最初から自分で作ればいいわけで、他人のふんどしを使っておいて自分の成果は独り占めという発想は、そもそもどうかと思うな。
 
 
……というわけで、こんなもんかな。私自身も特に法律的な側面はあまり詳しいわけではないのですが。
 

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